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お部屋に絵を飾りましょう
by 棚倉樽
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福島に生まれ青森に育つ。18歳で画家を志し上京。紆余曲折の末、50歳にして画業に専念。油彩&水彩の風景画・人物画に日々取り組んでいます 。
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つげ義春映画 四連発!!

つげ義春原作の映画を四本連続で観た…。

三月の棚倉旅行の際に電車の中で読もうと買った本が、つげの『貧困旅行記』。
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昭和40年代から50年代に主にひなびた温泉場を旅した紀行エッセイで、そのまったりした雰囲気は俺自身のひとり旅に旅情を加味してくれた。
本の最初に「蒸発旅日記」という不可思議な話が載っている。東京から蒸発して、会ったことのない自分の漫画のファンである女と結婚するために小倉へ旅立つ。
この看護婦もとらえどころの無い女なのであるが、湯平温泉でストリッパーとねんごろになり「ヒモになって方々の温泉地を流れ歩くのも悪くないな」と思う著者も掴みどころが無く嫌な共感を覚える(笑)。結局は看護婦とも肉体関係を持つのだが、蒸発を止め東京に戻る。

この『蒸発旅日記』は2002年に映画化されていて、ネットオークションでDVDを680円で落札して早速観た。
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怪しげなジャケットを見て予想していたのだが、俺が期待した「旅情」は微塵も無く、言わば「旅先での欲情」ってな映画であった。まあ、それはそれで楽しめた。
「蒸発旅日記」をベースにしているものの、「必殺するめ固め」「初茸狩り」「西部田村事件」といった漫画作品や、『貧困旅行記』の他のエピソードを加えているが、シナリオ的に成功しているとは言えない。
しかし、映画に登場する女達が実にいい。看護婦役の秋桜子(こすもすこ)のロリータっぽいイカレ方が憎い。若いストリッパー役は当時現役ストリッパーの藤野羽衣子(ふじのういこ)。実にエッチなボディーの持ち主だ。藤野の師匠である清水ひとみお姉様も登場するが…悲哀に満ちた裸を披露している。喫茶店のウェイトレス役の木下真利って女優のサディスティックな横顔にもシビれる。
このように、女の印象しか残らない映画であったが、メイキング映像は本編以上に面白かった。つげ義春も監修っぽい立場で登場する。

『蒸発旅日記』で消化不良を起こしたので、急いで楽天レンタルで借りたのが、『リアリズムの宿』(2003年)。
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幾分[つげワールド]を醸し出していたが、今風に言う「シュールなロードムービー」って感じで味気なかった。言葉遊びになるが、俺は「アングラな旅情映画」を期待しているのが分かった。
漫画の「リアリズムの宿」は、青森県のひなびた漁港の町、鯵ヶ沢(あじがさわ)を舞台にしているのだが、映画では鳥取であった。実は、俺は4歳から5歳の頃鯵ヶ沢に住んでいた。そしてこの地で弟が生まれた。映画が原作通り冬の鯵ヶ沢を舞台にしていたら、俺に限らず映画の評価は違っていたであろうな。

続けて観たのが、浅野忠信主演の『ねじ式』(1998年)。
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「ねじ式」は言わずと知れたつげ義春の代名詞。1968年に『ガロ』に発表され、あまりにもブッ飛んだ世界に精神分析学的解釈をひけらす輩もいたが、つげ本人は「そんなもんじゃない」と笑っていたそうだ。
映画は短編漫画の「別離」「もっきり屋の少女」「やなぎ屋主人」「ねじ式」を一本のストーリーにまとめている。これは『蒸発旅日記』とは違い、大成功だった。
原作を忠実に表現していることもあるが、不思議な人間達に接し、不思議な村や町を彷徨いながら最後は狂気の世界「ねじ式」に迷い込む展開が見事であった。
オープニングのふんどし男女の卑猥な舞踏シーンで、一気に1950年代の新東宝か70年代のアングラ映画のような錯覚に陥る。エロティックなシーンも満載だが、下手にヒネらず、日活ロマンポルノ的な匂い立つイヤらしさが充満している。
特に「やなぎ屋主人」のエピソードは、漫画を読んだ当時から、「こんなことが俺にもいつか起こるはずだ」とイヤらしい妄想を抱いていただけに、実写には思わず反応しそうになった(笑)。
これは「成人映画」であり、俺が望むところの「アングラ旅情映画」なのだ。
よって、決してオススメの映画ではない。「なんだこりゃ?」と嫌悪する人の方が多いのは予測出来るからね(笑)。だが、こうした邦画の粘着力に溺れる堕落感は、俺としてはたまらんよ。
丹波哲郎が元気にイカれたジイさんを演じているのも嬉しい。「ねじ式」の金太郎飴のババアがなんと清川虹子なのも、正体が主人公の母親であることの衝撃度を増している…それ程の意味は無いか(笑)。

劇中、銚子電鉄の「外川駅」が出てくる。
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偶然にも俺は、一昨年の冬に銚子まで自転車ツーリングした際に立ち寄った外川駅の油絵を描いていて、この映画の影響でイマジネーションが変化し、絵の中のストーリーを描き変えることにした…それ程大袈裟なことではないが(笑)。

『ねじ式』でドップリと[つげワールド]を堪能した俺が次に観たのは、竹中直人監督・主演の『無能の人』(1991年)。
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落ちぶれた漫画家が、生活のために多摩川の河原で「石を売る」店を開くというつげ漫画の哀愁漂う秀作であった。竹中直人の、つげへのリスペクトと映画作りの情熱がヒシヒシと伝わってくる。
竹中の女房役の風吹ジュンの疲れた演技が素晴らしく、俺の元妻を思い出しちょっと嫌な感じがしたな(笑)。キャスティングも竹中直人自身が担当したそうで、マルセ太郎や神戸浩といったディープどころの起用や、井上陽水を一瞬見せたりとサプライズもある。つげ義春も冒頭のシーンで登場している。

映画として充分楽しめるが、決してご家庭で観る映画ではない。
例えば…石屋の先輩である神戸浩が、金欲しさに山梨の山奥でマムシを養殖するのだが、誤って足を咬まれてしまう。その理由が、「セ○ズリでイッた時に思わず足をのばしてしまってマムシの籠を倒してしまったのです! セ○ズリが生き甲斐の私としては一生の不覚!」と大泣きするのだ。しかも、石屋の重鎮であるマルセ太郎の女房のパンティーをネタにしていたのだ。実は、この女房は神戸の元妻で、「私が先生の家から度々パンティーを盗むのを あの女は見て見ぬフリをしてくれていたのです! そういう優しい女なのです!」とまた大泣きするのだ(笑)。

つげ映画として、残るは『ねじ式』の監督・石井輝男が撮った『ゲンセンカン主人』(1993年)がある。これはDVD化されていないので、レンタル落ちのビデオをオークションで手に入れることにしよう。
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つげ義春の漫画は、結婚前の二十歳前後の頃まで熱病的に読んでいた。
油絵の創作といい、50歳になって青二才だった頃のエネルギーを貪欲に取り戻している俺がいる。。。。
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by Patch_It_Up | 2009-05-26 11:54 | 本・映画・音楽 | Comments(0)
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