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福島に生まれ青森に育つ。18歳で画家を志し上京。紆余曲折の末、50歳にして画業に専念。油彩&水彩の風景画・人物画に日々取り組んでいます 。 facebookもよろしく→https://www.facebook.com/tarutana カテゴリ
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映画『レスラー』
『The Wrestler』 水彩・クレスター中目 F4(24.2×33.4cm)※画像クリックで拡大
全盛期をとっくに過ぎた孤独なプロレスラーを描いたこの映画に感動し、主演のミッキー・ロークを絵にした。 ミッキー・ローク…、80年代絶大な人気を誇っていたが、90年代に入りスキャンダルによって落ち目となる。特に整形手術による顔の変化や肥満は致命的であった。また、92年にプロボクサーとして日本で試合をしたのだが、あまりにも酷い試合に「こいつは何もかも終わったな」と私は呟いたものである。思えば、バブル経済とともに現れ、そして去って行ったスターといった印象であった。 ロークを久々に注目したのは2005年の映画『シン・シティ』であった。かつてのセックスシンボルからは程遠い風貌と老け込みを巧くハメ込んだキャラクターが素晴らしかった。『レスラー』の役柄はこの時の延長線上にあるように思う。 『レスラー』の主演は、スタジオサイドがニコラス・ケイジを提案したのに対し、ダーレン・アロノフスキー監督はロークの起用を頑なに主張したそうだ。ん〜、ニコラス・ケイジでは『ロッキー』のようなお伽話で終わっていただろう。やはりローク自身のズタボロ体験が映画に生々しさを醸し出している。変わり果てた顔にも最初は驚かされるが、壮絶なレスラー人生を表すにはこれ以上のツラ構えは無い。 プロレスをこれほど真っ正面から丁寧に描いた映画は初めてではないだろうか。 撮影当時56歳だったロークの肉体は、スタローンのような美意識で作られたものではなく、まさに長年のファイトによって鍛えられた(と同時に衰えた)プロレスラーそのものの身体であった。撮影までの準備には相当のトレーニングを要したであろう。 さらに、プロレスファンにとっては当たり前のエピソードも隠さず描いている。ステロイドなどの薬物使用、試合前の対戦相手との「演出」相談、血を出すために細かく折ったカミソリの歯をバンデージに隠すことなど。 それよりも、盛りの過ぎたレスラーの生活がどれほど惨めなものかを見せつけられる。現在米国ではメジャーな団体はWWEのみであるが、その「スーパースター」と呼ばれる一握りのレスラーがファイトマネーだけで生活出来る。その中でも、怪我などで長期欠場しても復帰出来るような保証下にあるのは数人だろう。多くは怪我や人気の低下で有無を言わさず即解雇される。そうしたレスラーは新たに就職するか、マイナーな団体を渡り歩いてファイトを続けることになる。もちろんマネージャーもトレーナーも雇えず、移動も自ら運転する車だ。 ローク演じる「ランディ・“ザ・ラム”・ロビンソン」も普段はスーパーマーケットでバイトし、週末の試合に出場するといった生活を繰り返していた。二束三文のファイトマネーしか貰えないランディは家賃を払えず車で寝泊まりするのである。 かつて我が国が空前のプロレスブームであった頃、スポーツ雑誌「Number」で日本人レスラー達のインタビュー記事を読んだことがある。 多くの選手が、「あいつと試合をしたい」とか「誰が一番強いか日本選手権をやろう」といった発言をしていた。その中で故ジャンボ鶴田のみが、「プロレス界は社会的に認められた組織ではなく、選手に対する何の保証制度も無い。これからは引退後の生活保障も考えるような組織になってゆかなければならない」といった旨の発言をしていた。ショー的要素の強いプロレス界では難しい課題ではあるが、鶴田の視点はトップレスラーならではで、あの頃もっと業界内で論議されていれば選手の健康管理なども整備され、三沢光晴の悲劇を防げたかも知れないと思うのである…。 ランディ・“ザ・ラム”・ロビンソンも、過激さを増すクズ試合に耐えるために薬物を服用し、心臓発作で倒れてしまう。 そして、疎遠になっていた愛娘と和解したり、子持ちのストリッパーとの新しい生活を夢見たり、スーパーマーケットでフルタイムの仕事をすることにしプロレスラーを引退することを決意する。ところが、不器用なランディは再び全てを失いリングに上がるのである…。 ストーリーの展開は分かり切っているのだが、ロークの演技にぐいぐい引っ張られ、ラストシーンからエンドロールに流れるブルース・スプリングスティーンの「The Wrestler」まで一気に辿り着く。 ロークは映画の製作にあたり、親友のスプリングスティーンにテーマソングを依頼したそうだ。噂ではノーギャラ。この曲が実にいい!!!。 曲といえば、ランディがかつての抗争相手と20年振りに試合をする際、入場テーマにガンズ・アンド・ローゼズの「Sweet Child o' Mine」が流れる。過去の栄光から逃れられずリングしか居場所がない男に相応しい旋律であった。 映画を観終わって20年前に活躍した(ランディのような)レスラーたちを思い出した。 アルティメット・ウォリアー、スティング、ランディ・サベージ、ケリー・フォン・エリック、etc。ケリーは亡くなったが、他のレスラーたちは今どうしているのだろう。 皆私と年齢が変わらないな…。 孤独な50代、身につまされる映画であったが、貫き通すファイトを持ち続けることの大切さを教えてくれた。。。。
by Patch_It_Up
| 2010-08-01 18:04
| 本・映画・音楽
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