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福島に生まれ青森に育つ。18歳で画家を志し上京。紆余曲折の末、50歳にして画業に専念。油彩&水彩の風景画・人物画に日々取り組んでいます 。 facebookもよろしく→https://www.facebook.com/tarutana カテゴリ
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『五所川原の映画館、昭和32年』(小島一郎に捧ぐ)
油彩・F4(33.4×24.2cm)※画像をクリックすると拡大します
先月、テレビで青森市出身の写真家・小島一郎(1924-1967)の特集番組を観ました。 私は小島一郎をよく知らず、その作品も「ああ、古い青森の風景か」くらいにしか感じていませんでした。しかし、番組で紹介された小島の怒濤の生涯とその独特の創造力に感銘を受け、彼の作品をあらためて観ることにしたのです。 小島の作品は、一度プリントした印画紙を部分的にマスキングしながら何度も焼く「覆い焼き」という技法によって陰影と遠近感の強調された絵画的表現が特徴で、「写真界のミレー」とも称されています。 現在のデジタル技術ではこの覆い焼きは素人でも出来る手法と思われがちですが、手焼きであれほどの表現を施せるのは写真を知り尽くし画家的な造形力を備えた小島の卓越した才能の産物であると言えます。なにより、小島の手法は写真とは言え一枚限りの作品しか生み出さないことに感動を覚えました。小島の印画紙は画家と同じキャンバスなのです。 多くの作品の中で特に、『夕暮れ 五所川原市十三 』という作品に私は強烈に心奪われ小島一郎へのオマージュとして作品を描いたのであります…。 小島一郎 『夕暮れ 五所川原市十三 』 1957年 …冬の夕暮れ、少ない雪がより凍てついた雰囲気を醸し出す。 マントにすっぽり身を包んだ女は寒さから逃れるように早足で歩き去る。 女を追うように闇が空を覆い始めている。 闇は映画館の外灯を浮かび上がらせ、女は映画のポスターに一瞬目を奪われる。 「次の映画ッコは何やるんだべな」、女にとっても映画は最上の娯楽なのだ…。 私にはそんなイメージが伝わってきました。 そして、写真を「模写」するにあたっては色褪せたノスタルジアを表現するのではなく、昭和32年の原風景に入り込んだような生きた色彩で描くことにしたのです。 また、雪景色をあまり描いたことがなかったので「ブリヂストン美術館」へ足を運び、ギュスターヴ・クールベの技法を研究しました。ペインティングナイフを使った雪の表現は大いに参考になりました。 私の母が亡くなる半年程前、「俺が生まれた頃の一番の楽しみは何だった?」と聞くと、「そりゃ何たって映画だべさ」と言っていました。一番好きな映画は石原裕次郎の『錆びたナイフ』だったそうで(笑)。 『錆びたナイフ』が公開されたのが1958年、ちょうど小島一郎が『夕暮れ』を撮った時代。私の両親はその頃青森を離れ福島県棚倉町に移り住んでいたのですが、どうも写真の女性が若き日の母に見えてしょうがなく・・・。 実は、私は中学三年から高校卒業までの4年間、五所川原市に住んでおりました。 今頃の季節は登校前に家の屋根の雪下ろしを毎日やったものです。そして下校時はまさに小島の『夕暮れ』の風景の中を歩いて帰りました。 駅前に「グリーンハウス」という映画館があって、最新の話題作は必ず観たものです。最新といっても、東京での公開から一、二年は遅れて、しかも二本立て、三本立てでありました。大学進学をしないことに決めた頃からは学校の帰りによく映画を観ました。 グリーンハウスでの一番の思い出、それは高校三年の冬、『キングコング(76年版)』と『タワーリング・インフェルノ』を観た時です。その豪華二本立て、客は私の他に二人だけ。『キングコング』は後半ニューヨークで暴れ回り、クライマックスではあの世界貿易センタービルで壮絶な戦いを繰り広げるのでした。『タワーリング・インフェルノ』はサンフランシスコが舞台で、何もかもが豪華絢爛の映画でした。 さて、アメリカの大都市とハリウッド映画の迫力を五感に浴びた私が映画館を出て見たのは・・・猛吹雪で街灯すらボンヤリとしか見えず、頭から外套を被った婆さんがひとり背を丸めて歩いている光景でした。「東京さ行ぐ」決心をしたのはこの瞬間かも知れないのでした(笑)。 上京してから、高校の大先輩であるフォーク歌手の三上寛が私と全く同じ経験をしたことをテレビで話していました。彼が観たのはアン・マーグレットの『バイ・バイ・バーディー』だったそうで、時代的に私の時よりもっと衝撃を受けたことでしょう(笑)。 そんな様々な思いを抱きながらこの絵を描きました。 小島一郎の作品は「青森県立美術館」に常設展示されているようなので是非詣でてみたいものです。 ああ、青森への望郷の念が湧いてくるのであります。。。。
by Patch_It_Up
| 2011-02-09 23:43
| 日本名所図会
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