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福島に生まれ青森に育つ。18歳で画家を志し上京。紆余曲折の末、50歳にして画業に専念。油彩&水彩の風景画・人物画に日々取り組んでいます 。 facebookもよろしく→https://www.facebook.com/tarutana カテゴリ
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礫川浮世絵美術館の『凱風快晴』に感嘆する
「…館長のお話を聞く」、「…また勉強する」に続く礫川(こいしかわ)浮世絵美術館関連記事の第三回。
「2012年新春浮世絵名品展・後期」で葛飾北斎の冨嶽三十六景『凱風快晴』を心ゆくまで鑑賞した。 (礫川浮世絵美術館で購入した絵葉書) 見れば見る程、北斎の創作意図がひしひしと伝わってきた。 間近で鑑賞した時に主に感心した点は、富士の輪郭を驚くほどの細く黒い線で描いていることだ。これは富士を立体的に表す絶妙な線であると思う。これ以上太ければ背景と富士が分断され逆効果になってしまうであろう。 そして、絵から徐々に離れてゆくと、富士の中腹にサーッと光が差してくる。これは驚きであった。一見文様的にデフォルメされたかのような背景の雲も、この光の差し具合を考え抜いた表現であることが分かる。しかも、左から右へと雲が流れてゆく錯覚すら覚えた。 『凱風快晴』は、夏の夜明けに朝日を浴びて浮かび上がる富士を描いた作であるが、まさに裾野から山頂へと日の光が昇ってゆく壮大なパノラマが展開されていた。これは、初摺りに近い作ならではの感動である。後摺りのベタ「赤富士」では絶対に味わうことが出来ない。 さて、帰宅して『凱風快晴』のことを更に調べてみることに。まずは、一冊だけ持っている北斎の画集、集英社発行の「浮世絵大系・北斎」をあらためて見ることに。この画集に載っている『凱風快晴』は、礫川浮世絵美術館の作とおそらく摺った回が同じと思われた。私が注目した富士の輪郭線と中腹の明るさが一緒である。 解説には「収蔵・高橋コレクション」とある。高橋コレクションとは、経済学者の高橋誠一郎が収集した浮世絵のことである。高橋誠一郎は慶應義塾大学名誉教授にして吉田内閣で文部大臣、その後東京国立博物館館長、日本芸術院院長を歴任した人物で、芸術にも造詣が深く浮世絵の収集・研究の第一人者であった。私が持っている画集も、総監修は高橋誠一郎である。よって、この画集に載っている『凱風快晴』と礫川浮世絵美術館の『凱風快晴』は優れた作であると言わざるを得ないのである。 では、国内外の美術関連施設に収蔵されている『凱風快晴』はどのような作なのであろうかとネットで検索してみた。なにせ一万枚は摺られたと言われる『凱風快晴』なので様々な作があるだろう。 私は浮世絵研究家ではないので軽はずみなことは言えないが、PCの画面上とはいえ礫川浮世絵美術館の作とは明らかに印象が違う作が驚く程多い。東京の有名施設や北斎を冠にした地方施設には、いわゆる立体感のない「赤富士」が堂々と展示されているようだ。 最も驚いたのは、山口県と山梨県の某施設に収蔵されている作である。私が礫川浮世絵美術館で驚嘆した富士の輪郭線が「白く太い」のである。これはどういう訳なのか…。 経済的余裕があれば、各地を巡って実物を鑑賞し考察してみたいものである。 ネット検索中、面白いブログに辿り着いた。毎日のようにTVで目にする某ジャーナリストの、「赤富士に感嘆」と題した記事。四年程前に東京の施設で催された北斎の展覧会を観ての感想を書いていたのであるが、フランス国立図書館所蔵の作品に無造作に所蔵印が捺されていたことに「芸術への敬意がそこにはない」と憤っていた。調べてみると確かに大きな印が作品の構図を壊すように捺されていた。 私が想像するに、明治期にフランスへ渡った浮世絵の中に日本の収蔵家の印が捺されたものが多くあり、フランス国立図書館もそれを真似て捺してしまったのではないだろうか。 礫川浮世絵美術館の『凱風快晴』にも「林忠正」の小印が右下隅に捺されている。 ちょうどシャチハタと同じくらいのこの印は何だろうと、私も不思議に感じた。で、調べてみると明治期の美術商・林忠正収蔵の証であった。林はパリで画商として活躍し、浮世絵の普及と啓蒙活動に尽力した人物で、一級品しか扱っておらず「林忠正」の小印は現在でも作品の価値を保証するものであるそうだ。正真正銘、礫川浮世絵美術館の『凱風快晴』は一級品なのである。 それにしても前述の某ジャーナリスト、『凱風快晴』の芸術性に敬意を払うのであれば「赤富士」などと呼ばないで欲しいですなあ(笑)。。。。
by Patch_It_Up
| 2012-03-15 21:52
| 美術見聞録
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Comments(6)
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desire_san at 2012-03-16 00:34
この前礫川浮世絵美術館のお話を伺ってから、私もおかげさまで浮世絵の見方が変わりました。礫川浮世絵美術館にはあれから2度ほど行きました。線の美しさだけでなく、光の表現まで違うのですね。浮世絵を見るのがより楽しくなりました。芸術は持る力を養えば養うほど楽しめるようになる、人生も同じ化もしれないと思います。ありがとうございました。
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Patch_It_Up at 2012-03-16 15:47
>desire_san、いつもありがとうございます。
私も浮世絵の鑑賞がとても楽しくなっております。 昨年暮れに松井館長のお話を聞いたことの大きさを感じています。 今後も『凱風快晴』と同様の感動に巡り会いたいものです。
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rollingwest at 2012-03-17 06:18
富士山が世界遺産登録推薦まで来られたのも、自然遺産ではなく文化遺産のカテゴリーがあったからです。環境面でのネックにより自然遺産に指定されないので、文化遺産の価値(古来信仰、文学・浮世絵等に描かれた芸術文化)に焦点を当てて挑戦していますね。『凱風快晴』はまさにそんな富士山を表す象徴的な絵だと思います。
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desire_san at 2012-03-19 16:39
フェルメールの記事のコメントをいただき、ありがとうございました。
線の美しい画家は、洋画家にもたくさんいますね。 藤田嗣治を待たなくても、古くは、シモーネ・マルティーニの「受胎告知」の線の美しさには魅了されました。そしてすごいと思ったのはデューラーです。画集で見てもさの線のすばらしい美しさが伝わってきます。 一方で、このように”絵”がものすごくうまくなくても、たとえばデューラーと比べれば技術的には”子供レベル”と称してもよいくらいの画家でも、人を感動させられる画家もいます。 だから芸術は面白いのですが、私のように見ているだけの人間は気楽なものですね。 作品を創る方は大変だと思います。 私も写真撮影の真似事のようなことをしていますが、ブログに載せる写真は撮れても、”作品”と言える写真はなかなか撮れずに悪戦苦闘しています。
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Patch_It_Up at 2012-03-23 01:54
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Patch_It_Up at 2012-03-23 02:13
>desire_san、こちらこそ。
面で表現するか、線で表現するかは画家が作品ごとに苦心するテーマであります。 浮世絵をはじめとする日本美術は「線」を絶妙に駆使しています。 それは、現代の漫画やアニメ作家にも受け継がれていると思います。 水木しげるなどの国内の漫画家は勿論ですが、フランク・ミラーなどの米国のコミックライターにも潜在的に浮世絵や水墨画の影響があると私は思います。 本当に芸術というのは面白いものですね。
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