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お部屋に絵を飾りましょう
by 棚倉樽
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福島に生まれ青森に育つ。18歳で画家を志し上京。紆余曲折の末、50歳にして画業に専念。油彩&水彩の風景画・人物画に日々取り組んでいます 。
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リャドの原画に逢える新小岩の『杉山美術館』

I visited “The Sugiyama Art Museum" in the downtown area of Tokyo.

The Sugiyama Art Museum is an art museum of Joaquin Torrents Llado by the collection of Mr. Sugiyama who is a social insurance consultant. It is only here to be seen with the original picture of a Spanish great painter Llado in Japan.

I was impressed very much. And I heard a lot of precious episodes of Llado from Mr. Sugiyama. I will be to visit this art museum many times from now on.

リャドの原画に逢える新小岩の『杉山美術館』_a0146758_13315101.jpeg

 新小岩に美術館?と疑問に思われるでしょう。しかも、リャドの原画が見られる我が国唯一の美術館と聞けば、さらに驚くでしょう。そうなのです、あのスペインの天才画家J.トレンツ・リャドの原画を常設展示している美術館が、東京・新小岩にあるのです。


 私が初めてリャドを知ったのは1990年頃のTVワイドショーでした。何故かジュディ・オングと当時の旦那さんである美術商の鈴木某氏が「ダリの後継者」として絶賛していたのであった。バブル真っ只中の当時、私自身もいわゆる業界人でブイブイ言わせていた時期でありました。が、TV画面から伝わってきたリャドの人物画が強烈に脳裏に残り、画業に専念してからもリャドの原画に遭遇する日を夢見ていたのです。時折、都心のギャラリーでラッセンやヒロ・ヤマガタなどと同列でリャドのシルクスクリーン作品を垣間見ることはあったが、「俺が見たいリャドはこれじゃない」と憤慨していたのでありました。展覧会ビジネス真っ盛りの今、いずれデパートとか渋谷ナントカ村とかで「リャド展」をやるだろうと待っていても一向にその予兆すらない。


 無性にリャドの絵を見たくなった私は、ネット検索で「杉山美術館」を知りました。もちろん、都心のギャラリーのようにシルクスクリーン作品だけの展示であればスルーするところでありましたが、原画を常設展示しているとのこと。早速電車とバスを乗り継いで行ってきました。最寄りの駅は新小岩、隣町の小岩に10年間住んでいた私には身近な土地である。歩いて10分、見慣れた住宅街にポツンとその美術館がありました。

 一階は杉山経営労務事務所で、二階全体が展示室になっている。平日の午後、来館者は私一人。明るい室内、まずはイントロダクションのように鮮やかなシルクスクリーン作品に出迎えられ、奥に油彩画が鎮座しており、シルクスクリーンでは決して伝わってこない原画の迫力に一気に呑み込まれた。筆の勢いで絵の具のしぶきが額から飛び出しているかのような臨場感。私にとっては、青木繁、タマラ・ド・レンピッカの原画に出会って以来の感動。


 しばらくして「照明を変えてみましょう」と女性スタッフがスポットライト中心の照明効果に切り替えてくれました。こうしたことは他の美術館ではありませんね。おお、遺跡の中にいるような荘厳な雰囲気に。展示されていた唯一の人物画「カルビン嬢」が目の前に迫り来る。

 さらに「秘蔵の映像があります」と、かの女性スタッフがポータブルDVDをセットしてくれました。映像はリャドが日本人女性モデルを描いている様子をホームビデオで録ったもの。1990年10月30日のクレジットがあり、リャドが初来日した時に録られたものでしょう。20号ほどのキャンバスに下地を施すところから完成に至るまでを、途中シルススクリーンや画集にサインする様子を挟みながら記録された実に貴重なビデオ。カウンターの時刻表示から、リャドはこの絵を五時間ほどで描き上げたことが分かります。なんという筆の速さでしょう。タバコをふかしながら時折モデルに「疲れたかい?」などと語り掛け、あまり筆を変えず一気に描く姿にリャド芸術の根幹に触れる思いでした。たくさんの細かい部分に気がつきましたが、書ききれないのでこの辺にしておきましょう。


 ビデオを見終わった頃、宮崎駿に似たヒゲの紳士が二階に上がってこられ、もしかしたら館長かなとご挨拶。まさに館長の杉山岳久氏でありました。リャドの話はもちろん、当美術館設立の趣旨や昨今の美術事情まで貴重なお話を聞くことができました。私が抱いていたリャドにまつわる疑問の点と点が結びつくような話もあり、私の絵画芸術に対する持論をも確信することが出来たのであります。これは、数年前に礫川浮世絵美術館にて松井館長から北斎や浮世絵について教示された経験に匹敵するものでした。


 気がつくと、閉館時間はとっくに過ぎ、夕暮れ迫っていました。帰路、新小岩商店街の居酒屋の誘惑を断ち切りながら考えた。絶え間なく開催される大展覧会に出掛け初詣状態で名画を走り見するより、こうした美術館で偉大なる画家の体温を感じることの方が、美術を志す者にとって得るものは膨大だし、美術愛好家にとっても造詣が深くなるというものだ…。


 リャドと杉山館長、そして優しく対応してくれた女性スタッフに感謝する一日でありました。帰宅してからの湯豆腐とウイスキーが一際旨かった。。。。

リャドの原画に逢える新小岩の『杉山美術館』_a0146758_13321280.jpeg


by Patch_It_Up | 2016-11-05 13:35 | 美術見聞録 | Comments(0)
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