お部屋に絵を飾りましょう
by 棚倉樽
ご挨拶
福島に生まれ青森に育つ。18歳で画家を志し上京。紆余曲折の末、50歳にして画業に専念。油彩&水彩の風景画・人物画に日々取り組んでいます 。
facebookもよろしく→https://www.facebook.com/tarutana

★絵に関する問い合わせ等はお気軽にこちらへ→055.gif
カテゴリ
全体
古事記・絵物語
名画模写100選
美術見聞録
ロックスター画
ムービースター画
日本美人図
日本の趣
人物画
風景画
東京名所図会
松戸名所図会
日本名所図会
棚倉名所図会
希望の絵
立体造形
アスリートの肖像
個展・作品常設店
青木繁 考
岡本太郎 考
本・映画・音楽
思い出絵日記
若い頃の作品
絵画作品Tシャツ
怪談画
プロフィール
未分類
最新の記事
作品『オルソン夫人 (大草原..
at 2018-11-17 16:01
山種美術館で『日本画の挑戦者..
at 2018-11-15 15:05
作品『メアリー (大草原の小..
at 2018-11-06 13:20
作品『ローラとジャック (大..
at 2018-11-02 12:43
作品・古事記より序章『天地初発』
at 2018-10-27 14:32
映画『モリのいる場所』を観る
at 2018-10-23 16:28
出雲井 晶著『わかりやすい日..
at 2018-10-20 16:46
素晴らしきエログロおバカ映画..
at 2018-10-16 23:06
安野光雅著『絵のある自伝』を読む
at 2018-10-01 19:12
待望の内孫誕生
at 2018-09-23 01:24
検索
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


作品『北斎晩年』(藤沢周平著「溟い海」より)

a0146758_09401141.jpg

“Hokusai's later years”

19×27cmWatercolor painting

I painted the last scene of Shuhei Fujisawa's novel "Dark Sea" (1971). This novel is the story of the later years of the declining Katsushika Hokusai.

 藤沢周平、四十三歳にしての文壇デビュー作、「溟い海(くらいうみ)」を読む。昭和四十六年にオール讀物新人賞受賞にして直木賞候補の本作は、晩年の葛飾北斎の姿を描いた短編フィクションである。

 富嶽三十六景で絵師としての地位を確立した北斎であったが、その人気は今や落ち目。起死回生で発表した富嶽百景も「今さら富士じゃねえだろ」と不評。その頃江戸の話題をさらっていたのが、歌川広重の東海道五十三次。弟子や版元、町人、女郎の噂話を聞き、嫉妬に燃える北斎老人。ちょうど良く、続き物「木曽街道」を途中で投げ出した落ちぶれ渓斎英泉の後釜に版元が苦慮しているとの噂。てっきり自分が選ばれると思った北斎であったが、新進気鋭の広重が抜擢される。怒りが頂点に達した北斎は、与太者を引き連れて広重襲撃を企てる。しかし、夜半に帰宅する広重の様子を見て、なぜか北斎は襲撃を取りやめる。怒った与太に北斎は殴り倒される。心身ともに打ちひしがれた北斎は、誰もいない家に帰り、未完成の絵を布団を被って描き始めるのであった

 といったお話。江戸ならではの粋なエッセンスを散りばめた短い話の中に、北斎の娘お栄や息子、弟子、有名版元、有名絵師が登場する浮世絵ファンが泣いて喜びそうな寓話である。

 さて、私がこの小説で最も印象深かったのは、北斎が広重の成功を自分の若い頃と重ねて回想する場面。四十を過ぎても無名だった北斎は、人気取りのために音羽護国寺境内で大達磨を描いたり、米粒に雀二羽を描いたり、谷文晁との即興合戦で鶏の足に朱肉を塗って走らせ紅葉を描いたりした。今で言うパフォーマンスである。それを、若い版元に「香具師(やし)の啖呵(たんか)にすぎない」とズバリ言われる。「錦絵で世に出ようとするなら、一にも二にも絵そのものが問われる。人の肝をつぶすような画技も、それで浴びる世間の喝采も無縁なのだ」と版元の眼が語っていた、広重は人気取りのパフォーマンス無しに絵そのもので世に勝負している。話はもっと意味深いのだが、現在においても北斎の天才性を賞賛する例として取り上げられるパフォーマンスを「人気取り」と切った藤沢周平の眼力が私には痛快なのである。それは、四十三歳という遅咲きの藤沢自身の心の内でもあったのであろう。今流行りの、確固たる訴求意志のない画技自慢の細密画や、安易なcool-japan趣向のデジタル作品等々は、藤沢流の「香具師の啖呵的パフォーマンス」である。そういう私自身も、画家として注目されたいがために、パフォーマンスめいた展覧会を企画したり、奇をてらった作品を描いたりしてきた。その無意味さに今更ながら気づかされたのである。

 私が描いたこの小説のラストシーン、溟海(めいかい)に身構える一羽の海鵜(ウミウ)に様々な思いを込めて深い吐息を漏らしながら筆を走らす北斎老人の姿で余韻を残す、後世のアーティストに訴えかける見事なメッセージなのであります。。。。


「溟い海(くらいうみ)」は、文春文庫・短編集『暗殺の年輪』に収録されています。画像はブックオフで見つけた20年前の版で108円でした。GWにぜひご一読あれ。

a0146758_16381951.jpg


[PR]
by Patch_It_Up | 2018-05-02 09:40 | 日本の趣
<< 第四章・ 二『倭建命(ヤマトタ... 第四章・ 一『倭建命(ヤマトタ... >>