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お部屋に絵を飾りましょう
by 棚倉樽
ご挨拶
福島に生まれ青森に育つ。18歳で画家を志し上京。紆余曲折の末、50歳にして画業に専念。油彩&水彩の風景画・人物画に日々取り組んでいます 。
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安野光雅著『絵のある自伝』を読む

 私が敬愛する画家、安野光雅(あんの みつまさ)画伯の自伝である。2011年、画伯85歳の時に出版された。初出は日経新聞連載の「私の履歴書」。

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 2011年といえば、東日本大震災の年で、震災直後の4月に伊勢丹新宿店で開催された『安野光雅が描く「日本のふるさと情景」展』で画伯の絵に初めて直接遭遇した。その個展の概要と印象はこちら→「日本のふるさと情景」展

 大正15(1926)生まれの画伯は、今年92歳。現在も産経新聞に『安野光雅が描く洛中洛外』を連載するなど、お元気である。さて、本書は島根県津和野町でお生まれになった時に始まり、ご両親のこと、少年時代のほろ苦い思い出。そして戦中戦後の話、結婚生活、画家として世に出る過程が、優しい挿絵とともに綴られている。交流のあった人々との逸話も面白い。司馬遼太郎先生からダイアナ妃まで登場する。

 私が感銘を受けたエピソードがある。短い期間であったが画伯が教鞭をとった玉川学園の学長、小原國芳先生の話。

昭和25年、小原先生は全国を遊説し、山口県徳山にも来られた。「四国のとある海岸線を車で通った時、馬車馬に日の丸の旗を腹がけにしているのを見た。わたしは車から降り、その日の丸を五百円で売れと言った。日本は敗れたが、日の丸を馬の腹がけにして欲しくなかったのだ」と演説した。さらに、「GHQはわたしたちが国家を歌うことを禁じた。しかし今こそ、この場で国家を歌おうではないか」と小原先生はピアノで導入部を弾いて合唱を促した。全員が起立し、流れる涙を拭かずに歌った。

 文章だけでは愛国心を捨てなかった人々の苛烈な思いとして伝わってくるのだが、このほのぼのとした挿絵によって終戦直後の日本国民の自然な気持ちを感じるのである。キセルをふかすこのオッサンには何の罪もない。

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 あとがきに「篆刻(てんこく)のこと」として、「雲中一雁(うんちゅういちがん)」という言葉を紹介している。

 むかし杭州の篆刻会社を訪ねた時、ガラスケースに納められた「雲中一雁」という判子に強く惹かれたが、値段が骨董品的に高く買わなかった。町を離れてから後悔が膨らみ、蘇州で町の篆刻家を探し、「雲中一雁」を彫ってもらった。「雲中一雁」の真の意味は知らないが、一人はぐれて旅をする落ちこぼれを空想する。絵描きもほとんど一人旅で、認めてもらえなくてもやむをえないという前提である。一声でも鳴いて、雲中を行く自分を誇示して甲斐ない。そんな風に解釈して、この言葉にあこがれていた。

 ん~、戦前戦中戦後を生き抜き、美術の専門教育を受けず小学校の美術教員を経て、世界的な画家になった画伯ならではの大らかで温かいお人柄が伝わってくるではないか。

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 本書の扉にしるされた不思議な判子の意味を最後に知って、読後の感動はより深まり、私は奮い起ったのであります。。。。


by Patch_It_Up | 2018-10-01 19:12 | 美術見聞録
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