人気ブログランキング | 話題のタグを見る

お部屋に絵を飾りましょう
by 棚倉樽
ご挨拶
★絵に関する問い合わせ等はお気軽にこちらへ→055.gif

福島に生まれ青森に育つ。18歳で画家を志し上京。紆余曲折の末、50歳にして画業に専念。油彩&水彩の風景画・人物画に日々取り組んでいます 。
facebookもよろしく→https://www.facebook.com/tarutana
カテゴリ
全体
コロナ退散祈願作品
アートイベント『やまとごころ』
古事記・絵物語
日本の趣
日本美人図
美術見聞録
本・映画・音楽
名画模写100選
ぼくはエルヴィスが大好き
ロックスター画
ムービースター画
アスリートの肖像
大草原の小さな家より
松戸名所図会
人物画
風景画
東京名所図会
日本名所図会
棚倉名所図会
希望の絵
立体造形
個展・作品常設店
青木繁 考
岡本太郎 考
思い出絵日記
若い頃の作品
絵画作品Tシャツ
怪談画
プロフィール
未分類
最新の記事
令和六年年賀状・作品『白川郷..
at 2024-01-01 00:26
映画「プリデスティネーション」
at 2023-11-22 21:24
暑中見舞い状「城ヶ島の思い出」
at 2023-07-24 16:29
作品『竜飛崎』
at 2023-03-30 21:27
アクセル・ローズがリサ・マリ..
at 2023-01-27 00:39
因幡の白兎で謹賀新年
at 2023-01-01 17:08
作品『若き母と二歳の私』水彩部分
at 2022-12-26 19:30
成田山新勝寺参拝、「川豊」で..
at 2022-11-23 16:15
吉村昭 著『歴史の影絵』の「..
at 2022-11-09 17:59
スケッチ「夏の終わりを告げに..
at 2022-09-07 19:08
検索
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧


「エルヴィスが変えた米国社会」という新聞コラム

「エルヴィスが変えた米国社会」という新聞コラム_a0146758_22083044.jpg

 産経新聞に「モンテーニュとの対話」という連載コラムが隔週で掲載されている。筆者は産経新聞文化部編集委員の桑原聡氏。フランスの哲学者モンテーニュの言葉を引用し、現代社会のニュースを解説しているのであるが、私はモンテーニュのモの字も知らず、理屈っぽい文章なので毎回読んではいなかった。

 しかし4月12日の「モンテーニュとの対話」48では、私があらゆる分野を通じて最も影響を受けた人物エルヴィス・プレスリーの写真を載せて、「エルヴィス(文中ではエルビス)が登場しなければ、オバマ大統領、つまり黒人大統領の誕生はなかったのでは」という仮説の元、昨今の「文化の盗用なる概念」への疑問を示している。

 「エルヴィスがいなかったらオバマ大統領は…」の時点で、私には氏がおっしゃりたいことが即座に理解できた。南部出身のエルヴィスは、黒人音楽のリズム・アンド・ブルース(R&B)に親しむと同時に、白人音楽のカントリー・アンド・ウェスタン(C&W)のスターに憧れていた。事実1954年の彼のデビューシングルはA面がR&Bのヒット曲「ザッツ・オール・ライト・ママ」のカバーで、B面がC&Wの名曲「ブルー・ムーン・オブ・ケンタッキー」であった。それは、いずれも既存のカテゴリーに収まりきれないエルヴィス独自の音楽であった。こうして相容れない音楽が融合され、ロックンロールが生み出された。それは黒人文化と白人文化との間の壁がエルヴィスによってぶち壊され、55年後の2009年に初の黒人大統領が誕生することになった、という訳である。

 皮肉になるかも知れないが、政治的立場、メッセージを公には残さなかったエルヴィスではあったが、私が理解する限り保守系右派のエルヴィスは、民主党から黒人の大統領が誕生したことを歓迎したであろうかと思うのであります。

 コラムでは、ポール・サイモンが1986年にエルヴィスの邸宅の名称「グレイスランド」と銘打ったアルバムを、アパルトヘイト政策下の南アフリカで現地のミュージシャンを起用して制作したことを紹介している。この名盤を一部の人間が、「南アの音楽を搾取した」と糾弾したそうである。アルバムの収録曲には政治的メッセージが一切ないにもかかわらず、人々の目を南アに向けさせた。それが96年のアパルトヘイト全廃への流れに棹さした、と言うことはできるだろう、と主張している。

 さて、「文化の盗用」とはどういうことか、エルヴィスとポール・サイモンに見られるよう、音楽を含む文化は異文化からの刺激と借用によってより豊かになってゆくものだろうとし、しかし昨今の米国では「文化の盗用」という概念が幅を利かせ始め、「文化の盗用は悪」といった意見すらあると訴えている。

 私はこのコラムで初めて知ったのであるが、昨年、絶大な人気を誇るラップ、ヒップホップシンガーのブルーノ・マーズがある黒人女性活動家に、「非黒人の彼が黒人音楽をやるのは文化の盗用だ」と非難されたそうである。ブルーノはハワイ出身で、プエルトリコ、ユダヤ、フィリピンの血が流れる非白人である。活動家の発言は大論争を巻き起こした。

 かつてマイルス・デイヴィスがエルヴィスに関して、「あいつは俺たち黒人の音楽を盗みやがった」と発言したが、これは黒人対白人、ジャズ対ロックンロールといった明確な対立軸があった。しかし、ブルーノの件はマイノリティがマイノリティを非難するといった不毛な対立のように私には感じられる。

 マイルスと違い、ジェームズ・ブラウンは「俺に匹敵するアーティストはエルヴィスだけだ」と彼独特の表現でエルヴィスをリスペクトしていた。エルヴィスもジェームズの音楽に敬意を払い、彼のソウルバンドを借用したいと申し出たエピソードが残っている。このような寛容さがなければ、優れた文化芸術は生み出されないのだと私は思う。

 コラムは、モンテーニュではなくパスカルの言葉で締めくくっている。『人間は、天使でも、獣(ケダモノ)でもない。そして、不幸なことには、天使のまねをしようと思うと、獣になってしまう』。

 つまり、天使になったつもりで「私の言葉は天の声」とばかりに他人を攻撃する者こそまさに獣なのであり、なんでもかんでも批判・攻撃・対立せよ、といった輩を排出することになっているのであります…。

 最近滅多に目にすることのなくなったエルヴィスの写真に導かれ、長々と書きました。ひとこと言わせていただくと、写真はロックンロールの寵児と呼ばれた50年代のエルヴィスにして欲しかった。。。。


by Patch_It_Up | 2019-04-16 22:10 | ぼくははエルヴィスが大好き | Comments(0)
<< 作品『草薙剣(くさなぎのつるぎ)』 日本初の肖像画付紙幣は神功皇后... >>